麻生太郎所見2007総裁選

 

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自民党総裁選挙 所見発表演説会

日時 2007(平成19年)9月16日(日)午後2時から
場所 自民党本部8階ホール
備考 福田康夫候補、麻生太郎候補、以上2名が一人20分以内の所見演説を行った。

麻生太郎所見演説メモ(要旨・未定稿)

麻生太郎でございます。

親愛なる同僚議員の皆さん、自由民主党党員、党友の皆さん。
皆さんを通じ、わたくしは敬愛する、日本国国民の皆さんに申し上げます。
そして世界の皆様に、わたくしはおのれの信ずるところを訴えます。

わたしが愛する日本は、いま、この瞬間、立ちすくんでおります。
本来歩みを止めるべきでないときに、急停止を余儀なくされております。

このことを思うにつけ、わたくしは断腸の思いに駆られます。
責任を果たそうとして、果たせずにおりますこの1週間、
またこの先の、1週間。
政治の空白に、痛切な責任を感じます。国民の皆様に、心からお詫びを申し上げる次第です。

だからこそ、この総裁選挙に課された期待と、責任は、ことのほか大きい、
そう思わないではいられません。

自由民主党が本当に変わったのか。国民は見ております。
開かれた国民政党として、その名に恥じない政党になったのか。
国民は、瞳を凝らしております。
本総裁選挙の意義は、まずもって、その点にこそあろうと存じます。
後世、歴史家がふりかえるとき、古い自民党と、小泉改革以来の、新しい自民党との再試合だったと、そう記述するでありましょう。
どんな結末をもたらすのか。われわれに課せされた責務は重大であろうと存じます。

わたしどもすべて、国民の目を強く意識し、政策をもって白黒をつける戦いを、堂々と戦わねばならぬと存じます。
わたくしは、皆様の前に、政策の選択肢をお見せします。
わたくしが信じる、日本人の能力を語ろうと思います。
指導者に求められる、資質を申し上げます。
そのうえで、何を選ぶのか。
公平無私の見方、国益を忘れぬ目をもって、選んでいただきたい、このように思います。

急ごしらえでつくった合意は、簡単に崩れます。
あわててまとめた多数派は、成立のその瞬間、瓦解へ向けて動き出します。
我が自由民主党は、既にそのことを、過去の歴史から学んだはずでありました。
我が党は長い歴史において、ある結論に達しておりました。
それは、指導者を選ぶとき、国民に広く、候補者と政策の選択肢をお見せし、国民の声を聞きながら選ぶのでなければならないという、そのことであります。

皆さん、
いまほど日本が、危機に臨んで動じない、「強い」指導者を必要としているときは、ありません。
「安定した」指導者では、ありません。「強くて、頼りになる」指導者をこそ、必要としております。
また、いまほど日本の農山村、漁村、地域の経済が、たった二文字を求め、渇望しているときは、ありません。
その二文字とは、「希望」であります。

皆さん、
朝(あした)に希望をもって目覚め、昼は懸命に働き、夜は、感謝とともに床につく。

人間の営みとは、もしこの三つが十分にできるなら、幸せなのだと存じます。
わたくしは、日本の若者に希望を与えたい。
農山村、漁村のおじいちゃん、おばあちゃんに、この先、そんなに悪くはなりませんよ、

きっといいことがありますよという、希望を感じてもらいたい。
わたくしは、毎晩、感謝の思いとともに眠りに就けるよう、粉骨砕身、この身を捧げて参る所存です。

またいまくらい、日本の発する言葉が重みを増しているときも、ないのであります。
日本の発する言葉とは、煎じ詰めたところ、総理の発する言葉であります。
世界がそれに、耳を傾けます。

日本の環境を守り、治山治水に精を出しておられるお父さん、
お弁当をつくって子供を送り出し、それから自分も働きに出るお母さん、
あるいはまた、ネットカフェ難民と呼ばれ、あしたの暮らしを心配する若者にも、総理は呼びかけなくてはならぬのだと存じます。

わたくしは、「強い」言葉を発する総理になりたいと存じます。
我が国の進むべき道はこうだと、明確な言葉を語れる総理になりたいと存じます。
日本というのは素晴らしい国だ、頼りになる仲間だ、そして、尊敬すべき国だと、諸外国の指導者に、また国民に思ってもらうことのできる、
そういう言葉を発することのできる、総理大臣になりたいと、考えております。

総理に選ばれましたあかつきには、日本をどんなふうに変えたいのか。
申し上げます。
日本と日本人の底力に、わたしは揺るぎない信頼を置いております。
その底力を、存分に解放すること。
それによって、力強い成長の軌道に、いまいちど我が国を乗せることであります。
地方経済に、息を吹き返させることであります。
実力解放、自力成長、であります。

これから具体的な例を、内政について三つ、それから外交について三つ、申しあげます。

始めは内政についてであります。
第一は、将来不安の払拭。これは目下の状況で、まずは年金の話だと存じます。
第二に、徹底的な機会の平等。不当な格差は、断固つぶすということです。
第三に、経営者の目をもって、新たな成長戦略を力強く推し進める、ということであります。

順に、ご説明いたします。

まずは年金であります。
支払い漏れが一人もないよう、徹底を期します。
そのため、すべての国民の皆様に、年金が確認できる葉書をお送りします。

社会保険庁、自治体窓口で保険料を横領した不逞の輩の行いは、金額の多寡を問わず、言語道断の所業であります。
なぜなら、これは制度に寄せる国民の信頼を根底から掘り崩し、ひいては政治それ自体に対する不信を助長するからに、ほかなりません。
わたくしは、年金が国民の未来を託すにたる、信頼の置ける制度に生まれ変わるよう、政権の命を賭けて取り組んで参ります。

加えて、年金問題の本当の核心は、今日ただいま35歳の青年が、65歳になったとき、安心して暮らせるか。
そこに、見通しをつけさせてやることにあろうと存じます。
まずは現行制度に不公平をなくし、次に年金制度の将来設計を考え直す。
このことに、総力をつぎ込む所存です。

第二は、機会の平等です。
40歳とか、50歳になれば、人間、自分の顔に責任を持て、といいます。
危機に及んでどっしり落ち着き、ほほえみを絶やさぬ顔。
わたくしは、こういう顔を国民の皆様に、お見せすることも指導者の使命であろうと信じます。

人間とは、目の前の選択肢の中から、ひとつひとつ選んでいき、ついには顔をも自分でつくるわけであります。

ところが、おぎゃあと生まれたその場所が、日本のどこであるか。
生んでくれた両親が、どんな両親であるか。
自分で選ぶことはできません。

したがって、政府が心がけるべき最も大事なこととは、機会の平等を徹底して図るということであります。

そこから、格差の是正という、緊急の政策課題が出て参ります。
中でも、農山村、漁村といった、地方。
企業でいえば、中小零細企業。
ここに、いまの日本では、強い影が落ちております。
農山村、漁村に生まれつき、中小零細企業に働く両親のもとに生を受けた子供が、ただそのことだけで将来に豊かな展望をもてない……
そんなことになれば、日本は日本でなくなります。

方法はあります。
例えば、地方交付税のあり方を大幅に変えることが、その一つと存じます。
補助金にしても、地方が自分の工夫を活かして使えるようにしてやることです。
総務大臣として、わたくしは、国から地方へ3兆円の税源移譲という大改革を手がけました。全省庁が反対でした。
地方にできることは地方にという、構造改革をさらに進めます。

危機に追い込まれたとき、人間は二つの反応をとるであろうと思います。
助けてくれーと言って、人を当てにする。
なにくそと言って、自分で活路を開く。

中央と地方の関係が今のままですと、地方に「なにくそ」という気持ちがなかなか起きません。
例を挙げます。
能登半島の加賀屋。老舗の旅館です。
交通の便が悪く、だんだんと客足が遠のいておりました。
しかし、仲居さんに英語や中国語を勉強させ、台北や香港からのお客さんを増やして伸びました。
このあいだ、地震の被害に遭われましたが、評判はいささかも衰えておりません。

それから北海道の、旭川にある、旭山動物園。わたしも行きました。今では日本一有名な動物園です。
あれも、なにくそと言って、活路を開いた一例です。
企業や、団体には、こういうことがいくらでもできる。
自治体にも、これはできるというふうにせねばならんのであります。

別の例を挙げます。
半導体は、シリコンの板に、回路を書きます。
普通、回路は平面に並べます。
しかし一定面積の板に、回路を平面に並べる微細な技術は、もう限界に来ております。

それなら回路を、垂直に重ねて書いていけば、限界を突破できるじゃないか。
実はこれ、世界最先端の技術ですが、日本人の科学者が思いついた独創です。

圧倒的競争力をもつこんな技術で、我が国がいまいちど、半導体産業の先頭に立つ。
そんなことも、不可能ではありません。
申し上げます。日本の底力には、「とてつもない」ものがあるのだと、そう存じます。

そしてそういう技術をもった工場を、地方が誘致してはどうでしょうか。
観光産業なら、お客さんを広くアジアに求めるとか、
エコツーリズムの客を、思いきってオーストラリアやニュージーランドに求めるとか、

自治体には頭さえ絞れば、そして、それを許す財政的裏付けと人材さえあれば、
できることがいろいろとある。
わたくしの都市・地方間格差是正政策の根本には、市町村長が、地域経営者としての発想をもって、動きやすくする、
そういう背骨が通っております。

申し上げますが、こういう話は霞が関からは、出てきません。
総理総裁に求められる力とは、霞が関に信頼されつつ、
違うアイデア、違う発想を、彼らには到底思いつけない突破口を、示してやることです。

それに必要な総裁の能力とは、あらゆる人に、この人と話したい、聞いてもらいたい、アイデアを教えたい、そう思ってもらえることです。

そして第三は、経営者の目をもって、新たな成長戦略を力強く推し進めるということであります。
成長促進、といいますと、予算をくれ、という。
これが、お役人の発想。
何か新しい商売を探したり、仕入れの仕方を変えて原価をぐっと下げたり、
これが経営者の発想です。

我が党の、政調会長をさせていただいたときでありました。
港の通関やら、建築申請やら、そのたびに役所に紙を提出しろという法律が、数えてみたら5万2100本もありました。
それを、たった一本新しい法律を作り、1回で、それもオンラインで、手続きが済むようにしました。
すさまじい抵抗はありましたが、構造改革とは、こういうことをやるのであります。
日本経済のコストを、思い切って下げてやる。
それで、利幅が増えれば、株の配当も、働く人の給料も、ともに上がる。
こういうやり方は、いくらでもあります。
ただし、役所の縦割りを残していては、何もできません。
強い政治指導者がいて、初めて可能なのであろうと存じます。

外交に、話を移します。
三つ申し上げたいのは、第一に、インド洋の給油活動。
第二に、いま日本の外交が歴史的転機にあるということ。
第三が、拉致問題の解決です。

インド洋の活動は、日本が国益をかけ、自分のためにやっていることです。
6年前の9月11日、日本人も24人犠牲になったことをわれわれは忘れてはなりません。

インド洋は、日本に油を送る、シーレーンの出発点でもあります。
ここをテロリストの勝手気ままにさせてはならぬ。
日本の国益とは、その一点に集中します。
これを、アメリカのためなどと言うのは、事実誤認も甚だしい。

ヨーロッパの国々が、日本を見直したのは、この給油活動です。
それからイラクに行って、盗みの一つ、軽犯罪の一つも犯さず、見事な規律を示したわが自衛隊の諸君を見て、イギリスやオランダは驚きました。

みなさん、我が国のGDPは世界の10%を占めます。中国、韓国、ロシアを足したより、まだでかいですから。
それにふさわしい貢献を、日本は立派にやっている。
こう、彼らが心の底から得心した。
それでいま、我が国の外交は、大きく地平を広げました。これが、第二の点です。
欧州諸国と一緒になり、東欧諸国、バルカン諸国で、自由と、繁栄を伸ばしていく。
こういう政策ができるようになった。
安倍総理は、インドの国会でこれを「自由と繁栄の弧」をつくる政策だと紹介されました。
アメリカと、オーストラリアと、一緒になって、アジアや太平洋の安全にもっと責任をもっていこう、という政策につながった。
それらの根も、元をただすと、インド洋の活動にあったのであります。
これだけのスケールをもつ活動なのだということを、誰かが国民に語り続けていかねばなりません。わたくしは、やってまいる所存です。
日米同盟の強化は、こういういろんなルートから、もっとできるようになります。

第三は、拉致問題の解決であります。
わたしは、新潟の海岸に足を運びました。
横田めぐみさんが連れ去られた、その場所に行きました。
にぶく曇る、日本海を見ました。涙がにじみました。

断固、あきらめません。わたくしは日本国の主権をかけ、国民の生命を守るという、国家にとって最も重要な任務の遂行(すいこう)のため、北朝鮮に解決を迫ります。

最後に申し上げます。

わたくしは、パレスチナの若者が、日本を待っているのを知っております。
ホンジュラスの子供達が、青年海外協力隊がこしらえた教科書で、算数を学び、学校が好きになったことを知っております。
カンボジアの民法をつくっているのが、まだうら若い、日本の女性であることを知っています。

日本は、わたしたちが誇りとする国家です。まさに、「とてつもない日本」なのです。

わたくしの愛し、誇りとしてやまぬ日本を、日本人一人ひとりが誇りとし、未来に希望を、活力を求めることができる国になるよう、命を賭けて参ります。

全国の党員、党友、ならびに国会議員諸先生の深いご理解をお願い申し上げ、麻生太郎の所見の表明といたします。(大拍手)


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